ホピ山はいつも笑ってる

ゆとり世代の社会人(男)が、ギリギリのところで社会にしがみつき、毎日を面白おかしく生きていくブログです

そして世界は美しい。

あぁ、今日も空が青い

 

家を出て、駅までの道のり。

雲ひとつない青空が続いている。

 

朝露の影響か、日差しの割に気温は低く感じる。

 

また同じように今日が始まって行く。

昨日も見たこの景色。

隣の家の犬がまた鳴いている。重たいカバンを右手に持ち、駅へ向かう足取りは自然と早くなる。

 

別に急いでいるわけではない。

決して急がなきゃいけないわけではないが、この早さに慣れていた。

 

 

 

思えば気づいた時にはこの早さだった。

文句を言いながらも必死にしがみついていた。

 

もちろん歩くスピードだけではない。

世界そのものにだ。

 

目まぐるしく世界は回り、僕など存在していないかのように遠くへ消えて行く。

そんな世界に取り残されないよう両手を大きく広げ、全身でしがみついていた。

 

さっき聞いた犬の鳴き声も、

さっき見た街路樹も、気づけば過去の色。

 

10秒前のものはすでに色褪せ、次第に消えて無くなっていく。

そんな早さの世界で僕らは生きている。

 

 

 

けれども、そんな慣れているはずの世界にも

いずれ終わりはくる。

それは明日かもしれないし、10年後かもしれない。

 

 

 

 

それが僕には今日来ただけだ。

 

 

 

動くものは止まる。何もおかしくはない。

 

 

意識が戻った時には見知らぬ駅にいた。

無意識のうちに、乗ったこともない電車を乗り継いで僕は世界に逆らっていた。

 

 

もちろんひどく後悔した。

早く今までの軌道にもどらなければ。

早く今を過去にしなければ。

鮮やかすぎる景色の色を消し去るために、僕はもがき続けた。

 

 

早さを知った体は現実を受け止められない。

もがけばもがくほど世界は色彩豊かにゆっくりと進む。

何かにしがみつこうとすればするほど、

手は宙を舞い、なんの密度も持たない軽い軽い空気を掴む。

 

 

慌てふためきながら、心の中ではわかっていた。

それが多少なりとも止まらずに、今まで必死に歩いて来たからという、

揺るぎない経験によるものだともわかっていた。

 

 

 

一度止まった足はもう動かない。

止めたらそこで最後。あとは死ぬだけ。

 

昔誰かに言ったような言葉が脳裏をよぎる。

 

 

その瞬間、心の中が透明に澄んでいく音がした。

外の景色の色を取り込むかのように心が透明になってゆく。

 

 

まるで世界中の人がいない様な、自分だけの世界。そんな心の中に、透明な音が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

僕は間違っていない。世界は元からこんなものだ。 

空を仰ぐと諦めにも似た軽い笑いが溢れてくる。

 

 

 

「あぁ、今日も空が青い」

 

 

 

地球上のどこで見てもこの空は青く、

 

 

そして世界は美しい。